ハイチ大地震 交錯する怒りと嘆き、進まぬ支援(産経新聞)

 【ポルトープランス(ハイチ)=松尾理也】ハイチ大地震は17日で発生から6日目を迎え、緊急支援の力点は生存者の救出から被災者の保護に移りつつある。とはいえ、支援は遅々として進んでいない。黙示録的な光景が広がる首都ポルトープランスの住民の間には、怒りと嘆きのふたつの感情が交錯していた。

 日本の医療支援チームが被災地入りしたこの日、潘基文国連事務総長も現地に到着し、国家機能を実質的に失ったハイチの現状を「過去数十年で最大の人道危機の一つ」と表現した。国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、各国救援隊は43カ国から1700人あまりとなったが、混乱は拡大しており、ハイチ当局は同日、30日間の非常事態を宣言した。

 倒壊した市中心部のホテル「ベル・ハイチ」。がれきとなった現場では、仏領マルティニーク島から来たレスキュー隊が救出作業をしていた。「まだ生存の兆候が残っている」。ホテルには考古学の発掘作業に携わっていたフランス人団体客が滞在していたという。

 ただ、一般的に「生存の限界」とされる発生後72時間が過ぎた今、作業の力点は次第に生存者の救出から、がれきの撤去や被災者の保護に移りつつある。ホテル近くの別の倒壊現場では、だらんと垂れた死体の手足が、がれきの撤去作業をしていたシャベルからはみ出していた。

 大地震のシンボルともなった倒壊した大統領府。フェンスで仕切られた外側で、被害が大きかった高台の住宅地から避難してきたというダビド・オキシジンさんは、「この青々とした大統領府の芝生はいったいだれのためか。被災者に開放すべきだ」と話す。

 大統領府近くのポルトープランス総合病院では、ジャン・レベック医師が青い手術着姿で忙しく立ち働いていた。休暇先の米国から急遽帰国したレベック医師は、「電気がなく、手術は昼間しかできない。病棟が倒壊して、術後は屋外のベッドに野ざらし。なにより発電機を届けてほしい」と訴えた。患者のベッドが野戦病院さながらに並ぶすぐ横の道路脇には、手足のない遺体が転がっている。

 被災者による間に合わせのテントが立ち並ぶ聖アン広場では、看護師の資格を持つというギレン・シャジャマさんが「政府からも、国連からも、なんの援助もまだ届かない」という。野宿が続く被災者にとって、被災から晴天続きだったのが唯一の救いだが、「そろそろ雨が降る。いったいどうなるのか」と不安は募る一方だ。

 暗い表情を見せる被災者は現在、倒壊家屋から掘り出した食糧の残りで食べつないでいる。広場中央には、被災者で分け合うための食事がぐつぐつと煮えていた。「食べ物はみんなで分け合う。ここでは暴力や盗難はほとんどない」。阪神大震災を始め、大災害直後にみられる原始共産制のような相互扶助が、ここにも出現していた。

 印象的なのは通りに人があふれていることだ。黙々と一人で、時には男女が手をつないで早足に歩く人たちで、通りという通りはごった返している。

 いったい、どこに行くのだろうか? 裁判所の前でじっと通りを眺めていたシーラブ・リンドアさんに聞いてみた。彼らは家をなくした。交通手段も壊滅したから、歩くしかない。あたりまえではないか、と不思議そうに答えたリンドアさんは、しかし、しばらく考えてこうもいった。

 「ひょっとしたら、壊滅したこの街を記憶に焼き付けておきたいからかもしれない。たぶんみんな、歩かずにはいられないから歩くんだよ」

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